翻訳家、随筆家、探偵作家の他に、SFの先駆者とも言われる。東北帝国大学教授であり、医学博士でもある。当時、生理学の世界的な権威だった。帝大医学部の一年先輩に正木不如丘がいる。長男・望によると、生活は真夜中過ぎから暁方まで執筆し、昼頃まで寝るという夜型だった。
『毒及毒殺の研究』といった研究書も多数著しているが、これらは単なる通俗医学の紹介書にとどまらず、東西の文献伝説事実譚に加え、文芸、探偵小説の引用が豊富で、医学と文学の交渉を担う極めて啓蒙的な書となっている。
「新青年」に発表した作品群は医学に取材し、人体破壊のテーマが多く、陰惨さが濃いものとなっている。不木はフランスの作家モーリス・ルヴェルを愛好していて、冷酷な作風が似通っている。不木は「自分の作品が一部の人々に不快な感じを与えるのは、(人物の)取り扱い方があまりに冷たいからで、科学的なものの見方に訓練された結果、作中の人物に同情が持てないからだ」と語っている。
大正15年に甲賀三郎は「単純にトリックの面白さを追求した探偵小説」を「本格」と呼称した。平林初之輔は、乱歩をはじめ不木や横溝正史、城昌幸は「精神病理的、変態心理的側面の探索に興味を持ち、異常な世界を構築しているから」と「不健全派」と呼んだが、のちにこれは同じく甲賀によって「変格」との名が当てられ、小酒井不木もこの「変格派作家」のひとりとなった。
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